「巡る季節 廻る鯉」

清らかな魂は、四十九日で蓮の花から生まれる
この鯉もまた然り
蝉の声が聞こえる頃、稚魚は遊ぶように泳ぎ
秋になると、美しい尾びれを優雅に動かした
この鯉が泳ぐと
まるで後光が差したように水面に光が溢れた
季節は巡り、蓮の花は枯れ
鯉は水中深くに潜っていった

 

正定寺 襖絵 2022


2023 新シリーズ「Sou」

Souについて

 

人も地球も皆、いろいろなコトやモノの積み重ねで出来ている

地球で言えば、何億年もの間積み重なって出来た地層がある

人も日々の積み重ね、体、感情や学び、人と人の関係も日々の積み重ね

「層」が形になっている

そしてこの「層」は、やり直しは出来ないもの

時間が戻らないように、1度きりのもの

 

私にとって書道は、文字を書くことや墨を使う伝統芸術というだけでは無く、

線を一本書く事は、心を紙に表す事だと思っている

筆の先端まで自分の一部のように神経を尖らせ

呼吸や心拍もオリジナルのリズムとして筆の動きと連動している

書いた線を消す事は出来ないものが書道

上から塗ったり、消したり出来ない、潔さが私は好きで

この潔さと書道独特の体の動きを使い作品を作っている

 

このsouシリーズも、これまでの試行錯誤の積み重ね

文字からの脱却、色の縛りからの解放、

線のみならず面への進化

固定概念に縛られ、自分の作った枠を取り払いたいと悩み

100以上の日本庭園を周り刺激を受け

お寺の襖絵制作という過去に創作してこなかった、

物理的にも心理的にも大きな作品への挑戦

子供を授かり、海辺の街に引っ越し

これまで見えなかった感情、経験、世界の色を感じ

そして、souに辿り着いた

 

自分が表現したいことと、その表現方法がぴったりと一致し

削られて初めて見えた地層のように、

紙の上に誕生した


2021−2014


文字の起源をイメージし創作してきた中で、「文字」と「自然」の関係に興味を持ちました。

古代文字(象形文字)は鳥や獣の足跡を見て作ったとも言われています。

書と自然の線はとても関係が深いと考えています。

自然の中にある、ありのままの線は、書や人の求める美意識を動かすものであると思います。

なので、今は自然のなかの線を学び創作をしております。

 

2020年 本田ルミ




「永遠のクローン」というテーマは、元々1つの細胞だったかもしれない私達が、何億年という月日を経て、様々な命として生きていることの喜びであり悲しみを表しています。

 

最近の私は「美」とは何のか、という疑問を追及しております。そこで、私の「美」を探し求めるために、まずは最初の生命といわれている微生物について調べてみました。その中で有性生殖と無性生殖に特に興味を持ち、美しさとは「生死」が関係しているのではないかという仮説を立てました。全てが1つの存在ではなく、私とあなたが存在している、1つになることのない悲しみ、そしてそれ故に「美」は生まれたのかもしれないと考えました。しかし、私はまだ「美」を見つけられずにいます。もしかしたら、「美」は存在しないかもしれません。それ以前に、この世は形を持つ幻かもしれないと思いながらも、「美」の探求を続けていきたいと思っております。

2017 本田ルミ

 


「私は点」

 

私は点

ただの点

ビルの屋上から見れば ただの点

 

ビルは点

ただの点

雲から見れば ただの点

 

雲も点

ただの点

中を覗けば氷の粒で

 

点から点へ

点から点へ

それは繋がっていく

 

小さな点が

大きな点に

それはずっと繋がっていく

 


呼吸する波 深呼吸する雲

地上から大きな空を見ると、まるで海の中にいるような気持ちになります。

海の奥底に入ると、雲の上に出るのかも知れないと思います。

 

飛行機や船に乗り、水の中へと旅立ちます。

地上から空に上がって見える雲は、近づき、離れ、迷い、まるで心情の様です。

そして、雲は雨となり、海へ、波の呼吸にあわせ潜っていきます。

光も想いも海は吸収し、奥へ奥へと進んでいきます 。

2016年  本田ルミ